『肉声史』 戦争を語る (64)
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編集者
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西湘ブロック
「戦争は時として死をも忘れる」
小田原市 野谷 昌平(大正12《1923》年生まれ)
(あらすじ)
徴用《ちょうよう=国民を強制的に動員して、一定の仕事に就かせる》により海軍へ。その後召集令状が来て陸軍高射砲隊へ。自分は終戦1年前に徴用され、いよいよ本土決戦ということで、ひそかに出征《=軍隊に加わって戦地に行く》。兄の出征時とは違い寂しい思いもあった。
川崎の富士見公園の高射砲陣地に配属された。爆撃機B29が爆撃に現れたが、見上げれば豆粒ほど。高射砲は届かず爆弾をアメあられと落としていった。焼夷弾は束で落としたものが、ある位置で散る仕掛けになっていた。特に恐ろしいのは、艦載機で昼に何10機、何百機と飛んでくる。東京や横浜で迎撃《=攻めて来る相手を迎え撃つ》する高射砲の音が良く聞こえた。よく今まで生きていたと思っている。とにかく当時は弾が当たると死ぬなどとは考えず、夢中であった。
戦争が終わった時は信じられず、静かで不思議な気持ちであった。今、幸せすぎて戦争のことを知らぬことは恐ろしいと思う。
(お話を聞いて)
映画や小説を通して、戦争というものがどんなものかを知識としては知っているつもりでいましたが、今回、野谷さんのお話を聞いて、ただの知識だけでは理解できないと痛感しました。そして思想というものは、与えられる知識によって、こうも変化してしまうのかと少し怖くもなりました。
野谷さんは、戦争に召集されるとき不思議と怖くはなかったとおっしゃっていました。なぜならば、その時勢は「男子はお国のために戦うものであり、死ぬことは名誉なこと」であり、自分も周囲もそれが当たり前に受け止めていたからとの事でした。軍事教育や規制された情報の中、美化された「戦争」という知識。体験談をお伺いする中で、野谷さんにとっての戦争が、美化されたものから、ただ生きるか死ぬかの目の前の事実として、そして憎むべきものへと変化していく様子が分かり、本当の意味での戦争の恐ろしさを知っているのは、実際に体験された方だけだと強く感じました。
そして、今回お話をお伺いできて、ほんの一握りでありますが私にも初めて戦争を知ることが出来たと思います。最後に野谷さんは「自分には使命がある。」とおっしゃいました。戦争を伝えること、核兵器をなくすこと、平和に貢献すること、これは戦火を生き延びた自分に与えられた使命だと。戦争の残酷さを知っている体験者の方だからこそ、平和を深く愛する気持ち、それを守ろうとする意志の強さが伝わってきました。そしてその使命を伺った私自身の使命として、戦争がない平和な世の中になるよう少しでも貢献し、頂いたバトンを次の世代に伝えていかねばならないと感じています。
(聞き手 小田原市 稚野 恵子 昭和52《1977》年生)
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編集者 (代理投稿)